主な疾患-外傷

 外傷とは、何らかの物理的外力(特に、交通事故、転落、転倒、スポーツ中の事故、挟圧、鋭利な物や銃器による損傷などの力学的エネルギー)により受傷したものをいいます。
 外傷は鈍的外傷(交通事故、転落、転倒、スポーツ中の事故、挟圧などによるもの)と鋭的外傷(刃物などの鋭利物や銃器による切創、刺創、銃創などによるもの)に分類されます。 

 

➤ 骨折

 転倒や交通事故などにより何らかの外力が骨組織に加わり、それが骨強度をこえたときに起こります(骨が欠けたり、ひびが入ったりした場合も骨折に含まれます)。骨折すると、疼痛や腫脹(腫れ)、変形が生じたり、筋や関節の機能不全が生じたりします。
 また、骨折により血管が損傷し出血をきたしたり、神経が損傷し神経に麻痺をきたしたりする場合もあります。骨折が疑われる場合は、速やかに受診しましょう。

 

【主な検査】X線検査CTMRIなど
【主な治療方法】保存療法・手術療法(観血的整復術、内固定、創外固定)など

 

主な上肢の骨折

鎖骨骨折

 鎖骨骨折は、骨折全体の約10%を占める頻度の高い骨折です。交通事故やスポーツで転倒するなどして、肩を打ったり、手をついたりすることで起きます。
 治療は、保存療法(三角巾やバンドによる外固定)が第一選択です。しかし、近年は、変形癒合(骨が転位(ずれ)したまま癒合し変形を来した状態)による肩関節機能障害や整容的な観点から、手術療法を行う場合も多くあります。

 

上腕骨近位端骨折

 上腕骨近位端骨折は、転倒などにより、肘や手をついたときの外力で起こることが多い骨折です。特に骨粗鬆症を有する高齢女性に好発します。
 治療は、転位(ずれ)が小さい場合は、三角巾による固定などの保存治療を行います。手術をおこなう場合は、骨の中に金属のピンやスクリュー、プレートなどを用いて固定する方法があります。粉砕骨折(砕けるような複雑な骨折)の場合は、人工の骨頭を挿入することもあります。

 

上腕骨顆上骨折

 

 上腕骨顆上骨折は、小児における肘周囲の骨折ではとても多い症例です。転倒や転落の際、肘を伸ばしたまま手をついたときに好発します。また、安定性が悪く変形癒合(骨が転位(ずれ)したまま癒合し変形を来した状態)が生じれば、将来的に肘関節の成長障害や運動制限をきたします。
 治療は、主に手術療法(鋼線2~4本を用いて骨を固定)を行います。

 

尺骨肘頭骨折 

 尺骨肘頭骨折は、尺骨の肘頭(肘関節を曲げたときに突出する部分)の骨折です。肘頭を直接打ったり、肘を曲げた状態で手をついたりした際に生じます。
 治療は、手術療法として、鋼線とソフトワイヤーを用いた引き寄せ締結法が主に適応されますが、肘頭の粉砕が強い場合は、肘頭骨折用のプレートやスクリューを用いて固定することもあります。

 

橈骨遠位端骨折

 橈骨遠位端骨折は、手首の骨(前腕の橈骨)が折れる骨折です。手をついて転倒した際などに生じます。特に骨粗鬆症がある中高年女性が転倒したときに好発します。骨粗鬆症がある中高年女性以外でも、高所から転落で手をついたときや交通事故などの大きな外力(高エネルギー外傷)で生じることがあります。
 治療は、安定性や年齢により保存療法もしくは手術療法が選択されます。手術療法では、プレートやスクリュー、鋼線などを用いて固定します。

 

主な下肢の骨折

大腿骨近位部骨折

 

 転落や転倒などの外力が大腿骨近位部(股関節付近の大腿骨)に加わることにより起こる骨折です。大腿骨近位部は凹凸のある曲がった構造をしているため、転倒や転落の時に外力が集中しやすいという特徴があります。また、骨粗鬆症により骨が脆弱になった高齢女性に好発し、要支援・要介護の原因となりえます。
 大腿骨近位部は、寛骨に近い側から、「大腿骨頭骨折」、「大腿骨頸部骨折」、「大腿骨頚基部骨折」、「大腿骨転子部骨折」、「大腿骨転子部骨折」に分けられます。
 症状は、受傷直後から自動運動の不能(自分の意志で脚を動かすことができない)、股関節の疼痛、受傷した脚の短縮などがみられます。
 治療は、主に手術療法として内固定、人工骨頭置換術を行います。高齢者の場合は、長期臥床に伴う廃用症候群を防ぐため、できるだけ早期に手術療法を行い、術後早期からリハビリテーションを開始することが望ましいとされています。

 

大腿骨骨幹部骨折

 太ももの骨である大腿骨は、体重を支えるとても頑丈な骨です。大腿骨骨幹骨折は、転落や交通外傷などの大きな外力(高エネルギー外傷)により生じ、青壮年者に好発します。そのため、その他の骨折や臓器損傷を合併していることも少なくありません。その他、高齢者の転倒(低エネルギー外傷)などでも生じます。
 治療は、手術療法として、骨の中に金属の心棒を通してスクリューで固定する方法(髄内釘法)が第一選択と考えられます。ただ、骨の内部に十分な太さの心棒が通らない場合は、プレートを用いて固定することもあります。

 

大腿骨顆上骨折・顆部骨折

 大腿骨骨幹部骨折と同様に、交通事故などの大きな外力(高エネルギー外傷)や、骨粗鬆症などによる骨強度の低下を伴う転倒(低エネルギー外傷)などで生じます。この骨折は膝関節に運動制限をきたしやすいため、速やかに手術療法で骨の固定を行い、早期にリハビリを開始することが重要です。
 治療は、手術療法として、大腿骨の比較的高い位置で生じる顆上骨折には髄内釘手術をおこなうことが多く、顆上骨折でも膝関節に近いものや顆部骨折には主にプレートを用いた固定を行います。

 

膝蓋骨骨折 

 膝蓋骨はいわゆる膝のお皿の骨です。膝蓋骨骨折は、転倒や交通事故により膝を打つなど強い力が加わることで生じます。
 治療は、骨片の転位(ずれ)が小さい場合はギプスや装具を用いた保存療法を行い、骨片が上下に開いている場合(横骨折)や粉砕した場合(粉砕骨折)は手術療法を行います。手術は、鋼線とソフトワイヤーを用いた引き寄せ締結法や、鋼線を用いて周囲を固定する周囲締結法が適応されます。

 

脛骨骨幹部骨折

 脛骨はいわゆるすねの骨です。脛骨骨幹部骨折は、交通事故などで大きな力が加わることで生じます。また、スポーツなどで足が固定された状態(例:スキー)で強い捻転力(捻れて向きが変わるような力)が加わることで螺旋状に骨折することもあります。  
 治療は、骨の転位(ずれ)が小さい場合はギプスや装具を用いた保存治療を行うこともありますが、髄内釘手術(骨の中に金属の心棒を通してスクリューで固定する方法)により比較的小さい侵襲で早期に荷重をかけられるようになる、手術療法が適応されることが多い骨折です。

 

足関節周囲骨折

 脛骨、腓骨、距骨からなる足関節周辺は、骨折や捻挫をしやすい関節です。高所からの転落などの大きな外力(高エネルギー外傷)では、脱臼を伴う粉砕骨折を生じることもあります。
 治療は、転位(ずれ)がない場合は保存療法を行い、転位がある場合や粉砕骨折がある場合は手術療法を行います。足関節周囲骨折は、足を捻る向きや力の加わり方によりさまざまな骨折型を呈しするので、それぞれに適した手術法を選択することが重要です。

 

踵骨骨折 

 踵骨はいわゆるかかとの骨です。高所からの転落によりかかとを打つなど強い力が加わることで生じ、両側に骨折を認めることも少なくありません。また、高齢者は階段を踏み外しただけで骨折することもあります。  
 踵骨は全体重がかかる骨であるため、治療は、上にある距骨との関節面の修復を重視した整復と固定が必要です。転位(ずれ)が少ない場合は保存療法を行い、転位が大きい場合はスクリューなどを用いた手術療法を行います。

 

《TOPICS:アキレス腱断裂》
 アキレス腱(踵骨腱)は、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)と踵骨を繋げる太い腱です。アキレス腱断裂は、加齢によるアキレス腱の退行性変性やスポーツによるオーバーユース(使いすぎ)を背景に、アキレス腱が急激に伸長した時に生じます。30~40歳代でスポーツ活動中、特にバレーボールやテニスなどでの瞬発動作時(踏み込み、ダッシュ、ジャンプからの着地など)に好発します。
 受傷時は、「ふくらはぎを蹴られた感じ」「ボールが当たった感じ」といった表現の衝撃を感じ、破裂音を自覚することもあります。 症状は、疼痛、歩行障害(しばらくするとべた足での歩行可能となることが多い)、つま先立ちができないなどが見られます。完全断裂では、受傷部を触ると陥凹を感じます。
 治療は、断裂の程度に応じて保存療法(ギプス固定、装具療法)または手術療法(アキレス腱縫合術)を選択します。

その他の骨折

骨盤骨折

 交通事故や転落などの大きな外力(高エネルギー外傷)が骨盤に加わることにより起こる骨折です。その他、若年層のスポーツ外傷(筋肉の付着部がはがれる剥離骨折など)や高齢者の転倒(低エネルギー外傷)など、比較的軽微な外力で起こる骨盤骨折もあります。  
 大きく「寛骨臼骨折」と「骨盤輪骨折」の2つに分類されます。寛骨臼骨折は、骨盤側の寛骨臼と大腿骨側の大腿骨頭が接する股関節で生じる関節内の骨折です。骨盤輪骨折は寛骨臼骨折を以外の骨盤骨折のことをいいます。
 骨盤骨折は多発外傷を伴いやすく、死亡率は約5~30%といわれています。その多くの原因は、出血、感染症、臓器や神経の損傷といった合併症です。骨盤の辺りは血管が多く集まっているため、大量の出血があった場合はショック状態をきたす事もあります。
 治療は、受傷直後は止血と骨盤の安定化を行い、出血性ショックがある場合は輸液・輸血によりショックを改善します。一次処置後は、画像で骨盤骨折の部位や転位(ずれ)を確認し、全身の状態や年齢、活動性などを考慮し、保存療法(鋼線牽引など)または手術療法(プレートやスクリューを用いた内固定、創外固定など)を選択します。

 

 

➤ 骨折以外の外傷

主な皮膚損傷

擦過傷

 擦過傷とは、皮膚表面がこすられて、表皮が剥離した状態の傷のことをいいます。道路のアスファルトや塀などにこすれた時にできる、いわゆるすり傷のことを指します。

 

切創

 切創とは、体表組織を刃物などの鋭利なもので切られた直線状の創のことをいいます。創の深達度により、血管、神経、筋、腱などの損傷を伴います。

 

刺創

 鋭利なもの(例:ガラスの破片など)で刺された創のことをいいます。見た目の創が小さくても、深部組織の損傷や汚染に注意が必要です。

 

咬傷

 動物にかまれて生じる創傷のことをいいます。見た目の創が小さくても、口腔内細菌などによる感染に注意が必要です。

 

打撲症(挫滅創)

 打撲症(挫滅創)とは、鈍的外力(交通事故、転落、転倒、スポーツ中の事故、挟圧などによるもの)による外傷のうち、皮膚の断裂のないものをいいます。強い力(打ち身など)で皮膚が圧迫されるため、腫脹(腫れ)や皮下出血(あおあざ)が生じます。

 

捻挫

 捻挫とは、骨折や脱臼を伴わない(X線検査で異常がない)軽度の靱帯の損傷のことをいいます。スポーツ活動中や歩行時の段差などで足関節を捻ることで生じ、腫脹(腫れ)や疼痛、皮下出血(あおあざ)がみられます。
 治療は、重症度や経過に応じてギプスやテーピングを用いた固定を行います。

 

槌指(マレット変形)

 槌指(マレット変形)とは、ボールが当たるなどの突き指による受傷で、指の第1関節(DIP関節)が木槌(マレット)状に曲がって変形した状態をいいます。中指、環指(くすり指)に好発します。
 症状は、疼痛、腫脹、第1関節の屈曲、自動伸展不可(自分の意志で指を伸ばせない)などがみられます。
 槌指は、伸筋腱(指を伸ばす腱)の損傷であり、末節骨の骨折を伴わない腱性槌指(腱性マレット指、腱性マレットフィンガー)と、骨折を伴う骨性槌指(骨性マレット指、骨性マレットフィンガー)の2つに分類されます。
 治療は、装具固定による保存療法が一般的ですが、骨性槌指で脱臼を伴う場合は、手術療法として鋼線刺入による固定を行います。

  病態
腱性槌指
骨性槌指

 

 

 

外傷性脱臼(肩関節脱臼)

 脱臼とは、関節の骨が正常な位置からずれて関節面での接触が完全に失われた状態をいい、脱臼の原因が外傷によるものを外傷性脱臼、病的な因子によるものを病的脱臼と分類します。
 肩関節は構造的に脱臼が起こりやすく、肩関節脱臼は外傷性脱臼の中でも頻度が高い脱臼です。  
 治療は、X線検査で脱臼の方向や合併損傷を確認し、通常は麻酔下で徒手整復(手で転位(ずれ)をもどす)を行います。徒手整復が不可能の場合や骨折を伴う場合は、手術療法を行います。整復後は約3週間の固定と安静が必要ですが、初回脱臼で生じた損傷が完全に治癒せずに残ると、軽度の外力で再脱臼してしまう反復性肩関節脱臼を来すことがあります。

 

肘内障(小児肘内障)

 肘内障は前腕を急に強く引かれることで肘が亜脱臼(前腕にある橈骨が、それを肘関節部で取り巻いている靱帯からわずかにずれる)の状態になることをいいます。小児に好発する疾患で、転倒しそうになった時に手を引っぱったり、寝返りで腕を巻き込んだりして生じます。
 治療は、X線検査で骨や関節に異常がないことを確認した後、徒手整復(手で転位(ずれ)をもどす)を行います。通常固定は不要で、整復後から疼痛は消失します。

 

多発外傷

 多発性外傷とは、交通事故や高所からの転落などによる損傷で、身体の複数の部位に外傷を負った状態のことを言います。重症度が高く、生命に危機が及ぶこともあります。

 

手指切断

 手指切断とは、手の指が切断されることです。切断指が再着可能な状態であれば、再接着術が行われます。切断指の保存状態や切断の状態によって生着率が左右します。
 手指切断が生じた場合は、保存状態により、12~24時間以内であれば再着可能といわれています。

※ 切断した手指は、固く絞った生食ガーゼ(生理食塩水で湿らせたガーゼ)で包み、ビニール袋に入れ、それを外側から氷で冷やした状態で保存する(組織や血管を破壊してしまうため、直接水や氷につけたりアルコール消毒を行ったりしない)。

 

四肢切断

 四肢切断とは、交通事故や労働災害といった物理的外力によって、手や足が身体から切り離された状態を言います。切断肢が完全に切り離されたものを完全切断、皮膚や腱だけでつながっているものを不完全切断と分類します。上肢や大腿部の切断では激しい痛みと大量の出血によって、ショック状態を引き起こす場合もあります。

 

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