骨盤骨折
病気の概要
交通事故や転落などの強い衝撃が骨盤に加わることにより起こる骨折です。反対に、若い層のスポーツ外傷(筋肉の付着部分がはがれる剥離骨折)や高齢者の転倒など、比較的軽い衝撃で発症する骨盤骨折もあります。
骨盤骨折は大きく「寛骨臼骨折」(股関節の関節内骨折)と「骨盤輪骨折」(寛骨臼骨折を除いた骨折)の2つに分類されます。骨盤骨折は多発外傷を伴いやすく、死亡率は5~30%といわれています。その多くの原因は、出血、感染症、臓器や神経の損傷といった合併症です。骨盤のあたりは血管が多く集まっているため、大量の出血があった場合はショック状態をきたすこともあります。
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寛骨臼骨折
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骨盤輪骨折
出典:日本整形外科学会パンフレット
症状について
座れない、自力で体を動かせないなど激痛を伴う症状がみられます。骨折によって骨盤内の血管や臓器が傷つくと、出血斑や血尿・血便、低血圧、意識障害などの症状があらわれることがあります。骨盤の骨の位置がずれることで、両足の長さが異なったりすることもあります。
検査について
X線(レントゲン)検査で骨折の有無を確認しますが骨盤の形はとても複雑なため、CT撮影で詳しく調べることがあります。また、血管損傷やぼうこう損傷などの合併損傷を調べるために、血管造影を行う場合もあります。
治療
受傷直後は止血と骨盤の安定化を行い、出血性ショックがある場合は輸液・輸血によりショックを改善します。骨盤周囲を一定の圧力で圧迫する器具や、創外固定と呼ばれる骨折部を体外で仮固定する器具を用いて、骨折の部分を安定化させます。さらに、血管造影を行い、損傷した動脈にゼリー状の物質や金属製のコイルを挿入し人工的に閉塞させる処置(塞栓術)を行います。
これらの症状が安定したら、画像で骨盤骨折の場所や骨のずれを確認し、全身の状態や年齢、活動性などを考慮し、保存療法(鋼線牽引など)か手術療法(プレートやスクリューを用いた内固定・創外固定など)を行います。
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寛骨臼骨折の治療
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骨盤輪骨折の治療
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監修:山下 学
整形外科/外傷グループ
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