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2019.03.27 徒然音楽 解体新書

Vol.4 「達郎ワールド」

皆さま2019年をいかがお過ごしでしょうか。

 残された平成を僕は大変惜しく感じている毎日でございます。私事ではございますが、平成最後のクリスマスは5.1chオーディオの前でクリスマスソングに浸り、年末のカウントダウンはそのスピーカーから流れる格闘技番組とバラエティ番組の音声に包まれて、無駄に贅沢なロンリーライフを満喫し、学生時代となんら変わらない過ごし方で2018年を締めくくりました。後悔はありません。
 そんな僕の荒んだ心にフッと舞い降りてきたのは、「このままでいいのか…」とかそんなことではなく、「聴いていて気持ちのいいアーティストとは誰なんだ…」ということ。
 製作技術や機材の発達で音質の良い音楽は山ほど世の中に出回っているけど、どの楽曲でも気持ちの良く聴けるアーティストとは誰なんだと、自分に問いてみました。私も人間なので、贔屓で聴いてしまいがちですが、とりあえず、僕の辿り着いた見解が、

「山下達郎」。

 彼は1975年にシュガーベイブというバンドでデビューし、以前「音楽解体新書」でも取り上げた初期のシティポップ時代を築いた1人。65歳を超えた今でも現役でライブを繰り返すバケモノ級のキャリアを持つロン毛のおじさん。嫁は竹内まりや。
 誰もが聴けば大合唱「クリスマス・イブ」なんて1983年にリリースされてからというもの、88年~92年までJR東海のCMで起用され、それから8年後の2000年でも再度ヒットし、累計出荷枚数が200万枚を超えたヤバ目の作品。12月になると、当時のCMを某tubeで見る度に、涙してしまう程の完成度。
 この曲のミソを僕は、30秒程度の「イントロ」にあると考える。静かな夜を連想させるリフの17秒間、次にベルとともにパーカッションが入り鼓動の高まりを感じさせ、「雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう」なんて、冷たい夜を歌いはじめる。曲が進むに連れて、彼の淋しいクリスマスが描かれて行くのが、なんとも自分とオーバーラップして…。

 そんなことはさておき、次に重低音強めのヘッドフォンで聴いて頂きたいのが78年リリースの「PAPER DOLL」と言う曲。ベース強めで音の数も少なくて、退屈感を感じるが、分かりやすい音とベースのループがとてつもなく気持ちいい。シンプルイズベスト。こういう言い方は失礼だが、分かりやすく言うとアイズレーブラザーズの匂いがする。奇しくも恋の曲だが、束縛されるのはちょっとゴメンっていう内容。切ない声で「いつまでも一緒だと囁いている君はただ、掌に僕を乗せ転がしているだけなのさ」なんていうパンチ効いたワードから始まり、「僕らの恋はまるでおもちゃさ、愛の本音も判らない、君はただ一人占めしていたいだけ」って、なんてこと言うんだ!! 達郎さん!! 僕も束縛されてそんな事言ってみたいよ!! ちなみに当時のレコード会社からは売れないって言われてシングル発売できなかった曲。それでも僕の耳はこの曲にハマり、勝手にアウトロをサンプリングしてオリジナルトラックを作っちゃったのは、ここだけの話。いやーたった2曲でここまで僕の寒い心をさらけ出すことになろうとは…。

 では、テイストをグッと変えて、80年代を謳歌した方々には釈迦に説法ですが、82年リリースの夏の定番曲「SPARKLE」で真冬に暖まりましょう。
 この曲も耳から離れなくなる特徴的なギターカッティングのイントロ。達郎氏曰く、NiteflyteのIf you want itが元ネタになっていると。まだ午前10時なのに、日焼けする夏の強い日差しが眼に浮かんでくるでしょ。このイントロ聞くだけで、オープンカー(持ってないし乗った事もないけど)で海岸線を走っていきたくなります。歌詞はたったの136文字。たったこれだけで情景を映し出すのは、紛れもなくこのギターカッティングのチカラでしょう。
 僕がこの曲と出会ったのは金も無く退屈な夏のある日、先輩から5万で買った悪趣味なホイールを履かされていた日産キューブで、カーナビもないまま知らない道を走っていた時。トンネルを出て真っ青な海が目の前に広がり、トンネルで鳴りを潜めていたラジオが電波を拾い始めてこのギターカッティングが聞こえ出し、テンションが上がりまくったのを思い出します。この曲を聴くなら是非、音質の悪いカーステで聞いて欲しいですね。それでも絶対ゾクゾクするから。

 そんな上がった気分のまま次は80年にリリースされた「RIDE ON TIME」で飛んで行っちゃいましょう。恐らく僕ら世代には木村拓哉主演のドラマ「GOOD LUCK!!」で聴いた事ある人が多いはず。先述のシュガーベイブというバンド解散後、ソロでヒットした曲でシングルバージョンとアルバムバージョンとがある。
 さてシングルバージョンとアルバムバージョンとの違いだが、アルバムバージョンの方がテンポがやや遅く、演奏の音がクリアで重厚感が増しているとしか文字に表現出来ない稚拙な小生のボキャブラリーをお許し頂きたい。滑走路を走って大空に飛び立つならばシングル、じっくり聴き込みたいならばアルバムバージョンがオススメ。
 この曲の聴きどころは、音楽に空間を感じるところでしょう。って何言ってんだマサル! と、僕でも言いたくなりますので、分かりやすく言うと、いわゆる昭和歌謡曲みたいなギンギンのエコーじゃなくて、繊細なエコーを取り入れる事で音に奥行きを作り出しているんです。
 現代では機材の進化で奥行より、音圧を上げて迫力や勢いを表現しているけど、達郎マジックは音に遠近感を創って立体感を出す。オーディオマニアの友人宅で達郎氏のアナログ盤を聞くと、音の空間に投げ出されたような感覚に陥ったことに、非常に驚きました。
 デジタルの綺麗な音に囲まれて生きているけど、アナログの音に触れるとデジタルの音がいかに削られているかを実感できるので、是非お試しあれ。

 ここまで読んで達郎ワールドに興味を持ってしまった方にアルバム「RIDE ON TIME」に収録された「daydream」は必聴。
 タイトル通り空想や白昼夢を題材にしたファンタジックな内容で、跳ねるベースと「SPARKLE」とは一味違うギターカッティングでカラフルな世界観を感じられます。この曲を聴くと、目を瞑った時のいろんな色のモヤや幾何学模様が見える、アレを思い出しちゃいます。歌詞には沢山のカラーが登場し、これだけの色を聞くなんて日常生活ではあまりないので、思いっきりファンタジーに浸れます。こうやって感覚を文字にすると本当に自分は変態なんだなって実感しますが、それを感じさせる達郎ワークに改めて驚き、感銘を受けます。この歌詞は吉田美奈子が作詞し、カラーチャートを眺めて作った歌らしいです。やっぱり吉田美奈子の作詞は天才的。
 吉田美奈子といえば82年リリースの山下達郎の作品「ふたり」も作詞しています。上記で紹介した作品たちとは雰囲気が一味違う曲で、ジャジーでbpmも遅めのゆったり愛を感じる曲になっています。聞くなら夜更けに一人で愛する人を想いながら聴いて欲しいですね。絶対すぐに会いたくなるから。
 この曲は達郎の代名詞「一人多重録音」を使用し、音の深さ・愛の深さを演出しています。ただ後半の歌詞に「愛が深いとこんなにも悲しい」とあり、「寄り添う影が溶けたらそれで もう決して離れないから僕は… 心を継ぎ合えたらそれで もう決して離れないから僕は…」と続き、センチメンタルな部分も匂わせていることから、少し大人な愛を歌っていると推測できます。
 人を想う気持ちってどのアーティストも得意だと思うんですが、音楽と歌詞がこんなにも溶け合うのも吉田美奈子と山下達郎ならでは。

 以上、長々と山下達郎を語って参りましたが、紹介しきれない名作も山ほどありますので、興味を持たれた方はベスト盤を聞いて、気に入った曲が収録されているアルバムをディグってみてください。
 きっと、すばらしい作品に出会えますよ。

おやすみBGM プラスティック・ラヴ / 竹内まりや【Variety(30th Anniversary Edition)Original recording】に収録

(米盛病院院内広報誌:2019年冬号より) 

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