2024.07.05(最終更新日:2024.09.11)
バレエ×スポーツドクター ~カラダ改善録バレエストレッチ(番外編)~
バレエ×スポーツドクター ~カラダ改善録バレエストレッチ(番外編)~
バレエの要素を取り入れて、美しい姿勢や健康づくりを目的としたストレッチを行う「バレエストレッチ」。当院整形外科の山下医師は「医学的に見ても理にかなっていることが多い」と話します。1949年の創設以来、鹿児島におけるバレエの普及・振興を牽引してきた、白鳥バレエさんと一緒に紹介していきます。今回はイントロダクションとして、この取り組みのきっかけなどをご紹介します。
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白鳥見なみさん(写真左から2番目):白鳥バレエ主宰/公益社団法人日本バレエ協会九州南支部初代支部長現相談役/鹿児島県バレエ協会会長
白鳥五十鈴さん(写真左端):白鳥バレエ 団長/公益社団法人日本バレエ協会九州南支部運営委員/鹿児島県バレエ協会 副会長
山下学(写真右端):米盛病院整形外科医師/日本スポーツ協会公認・IOC国際オリンピック委員会公認スポーツドクター
― スポーツドクターである山下先生がバレエに興味をもったきっかけは?
山下:初冬、80代の女性が腰を痛めて外来に来られたときです。レントゲンでは酷使され変形した脊椎の画像。MRIでは椎間板はみずみずしさを失い、腰痛の原因は骨でも椎間板でも筋肉でもなんでも説明がつくような状態でした。しかし、身体診察をすると驚くべきことがおこりました。床に手はベタっとつくし、足を上げれば顔の手前まできたのです。今までの概念が吹き飛んだ瞬間でした。実はその患者さんが白鳥見なみさん。「ここに、スポーツや健康に生かせるヒントがあるのではないか?」バレエに初めて興味を持った瞬間でした。
― 白鳥メソッドと呼ばれるストレッチは、どのようにして生まれたのですか。
見なみさん:私が2代目として白鳥バレエを継いだ当時、鹿児島はバレエ創成期。バレエの普及に10ヶ所ほどのレッスン場を回るなど多忙な日々を送っていました。疲れが蓄積していく中、「ちょっとした工夫で、いつもよりスムーズに動くように感じた」ことがきっかけで、様々な動きを自分の身体で研究していくことになりました。さらに、ロシアへ留学したときに「欧米のダンサーに比べ、手足の短い日本人が渡り合うにはどうしたらいいか」とも考えるようになりました。「白鳥メソッド」はそういった世界と渡り合った経験をもとに、自らを実験台にして積み重ねた結晶ともいえます。
― 子どもから大人まで幅広く対象にされているそうですね。
五十鈴さん:私はブランクを経験して、加齢で体が硬くなったりも感じるので、自分なりに考えながら可動域の広げ方を研究してきました。小さな子供たちが故障することなく、やわらかい筋肉と綺麗な動きを身に付けられるようにストレッチを組み立てています。
バレエを習いにくる子どもたちだけでなく、地域の企業や団体を対象に、出張ワークショップも行っています。ある企業では長年肩が上がらなかった中年男性が、ワークショップ後に肩の可動域が広がった事例もありました。病院に行くほど困っていないものの、ワークショップを受けて体が軽くなったと言われる方も多く、大変好評です。
― 山下先生は、白鳥バレエのこの取り組みにどんな印象を持たれていますか。
山下:お二人のバレエストレッチに対する意識の高さには、見学してみて改めて驚きました。バレエダンサーもいきなり開脚ができるわけではなく、全身を温め、徐々にならしていき、そして開脚。きちんと順番があるのです。
バレエダンサーは、一般的な部活動生やアスリートの何十倍もの時間をストレッチに費やしていますが、一方で、伝統的に続けられてきたという側面もあり、「なぜそのストレッチをしているのか」を言語化できていない部分も見受けられました。
― このコーナーでどのようなことを伝えていきたいですか。
山下:お2人の共通点は「バレエストレッチを医学的に正しく美しく追求する」こと。ストレッチ中のポーズを真似するだけではなく、指先まで意識する感覚、さらには個々の柔軟性にあった段階的なアプローチをし、どのような点に気をつけて身体を動かせばよいのかという安全面を意識して紐解いていきたいと思います。できる限り医学的に言語化し、また根拠となる理論を詰め込んでお届けいたします。

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