2023.03.27(最終更新日:2023.05.02)
第22回 焼酎の甲乙って何?
米盛病院の非常勤医師であり、焼酎マイスターの資格も持つDr.畑がお届けする鹿児島ならではの焼酎雑学。
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皆さま、こんにちは。宇治徳洲会病院救命救急センター長(兼米盛病院非常勤医師)の畑です。 行動制限がほぼなくなった2023年、皆さまはいかがお過ごしでしょうか?とは言え、なかなか大勢で飲み会を開催するのは難しいでしょうねぇ。
よく聞かれる質問
さて、私が2019年に焼酎マイスターと焼酎唎酒師の資格を取得して以降、皆さまから最も頻繁にいただく質問は「どの焼酎が一番美味しい?」です。「森伊蔵・村尾・魔王の3Mでしょうか?」とも。
焼酎マイスターになって、メーカーの皆さまともお会いする機会が増えました。すると、どの焼酎メーカーも努力に努力を重ねていい焼酎を造っていることが分かってきます。
まさに「甲乙付けがたい」状況なのです。ですから私は皆さんの質問に対してこのように答えるようにしています。
「美味い焼酎も不味い焼酎もありません。あるのは個性なのです」と。
しかし、皆さまの中には「既に甲乙付いているじゃないの?」って思う方もいらっしゃると思います。
では、あの「甲類焼酎」や「乙類焼酎」とはいったい何なのでしょう? 甲乙丙丁なんていうと、昔の通信簿みたいですよね。
「焼酎甲類」と「焼酎乙類」と呼ばれるまで
焼酎は水とアルコールの沸点の違いを使って、「蒸留」して造られます。1回だけの蒸留で造られているものを「単式蒸留焼酎」といい、蒸留を繰り返して作られているものを「連続式蒸留焼酎」といいます。
19世紀前半、産業革命まっただ中のイギリスやアイルランドで「連続式蒸留器」が発明され、明治の終わり頃、日本にも導入されました。連続式蒸留器で繰り返し蒸溜されたアルコールは純度と濃度が高く、薄めて飲んでみるとすっきりした淡麗な味わいになります。
一方、昔ながらの単式蒸留の焼酎は、アルコール以外の香り成分もまだ多く残っており、味わい深いものとなるのです。皆さんはどちらがお好みですか? 文明開化の時代、新しいものが好まれました。そして、付いた名称が「新式焼酎」と「旧式焼酎」です。
そして、戦後まもなくの昭和24年、酒税法が改正され、新式焼酎を「焼酎甲類」、旧式焼酎を「焼酎乙類」と呼ばれるようになったのです。
「本格焼酎」という名称
現在、焼酎甲類は「ホワイトリカー」として売られ、チューハイやカクテルのベースとして飲まれています。一方、焼酎乙類はどうなったのでしょうか?
何だか、乙類なんて呼ばれると、一段下がった品質のようにも聞こえますよね。そこで酒造組合側が政府に訴え、昭和46年に「本格焼酎」という名称を使えるようになったのです。
「本格焼酎」を名乗るには、厳しい基準があります。法律で決まった原料を使い、添加物を加えていないということが条件です。でも、皆さん、市販されているほとんどの焼酎は「本格焼酎」ですよね。焼酎メーカーの努力の結果です。
なお、「焼酎甲類乙類混和」と呼ばれるものも一部で販売されています。焼酎甲類は実は安価なので、安く売るために混ぜているんですね。
いろいろな呼び方がありますが、簡単にまとめると以下のようになります。
さて、今日も焼酎の歴史に思いをはせながら、「本格焼酎」でお湯割りといきましょう!
- 連続式蒸留焼酎=新式焼酎
=焼酎甲類≒ホワイトリカー - 単式蒸留焼酎=旧式焼酎
=焼酎乙類≒本格焼酎
次号は「黄金(こがね)色の焼酎って素敵!」です。お楽しみに!
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焼酎マイスター Dr.畑
宇治徳洲会病院 救命救急センター長 / 米盛病院 非常勤医師 畑 倫明
焼酎と温泉をこよなく愛する医師。追求心が強すぎて、好きなだけでは飽き足らず、「温泉ソムリエマスター」に続き、このたび「焼酎マイスター」「焼酎唎酒師」も取得!