2023.11.02(最終更新日:2024.01.18)
第26回 伊豆諸島にも芋焼酎!?
米盛病院の非常勤医師であり、焼酎マイスターの資格も持つDr.畑がお届けする鹿児島ならではの焼酎雑学。
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突然ですが、東京の島嶼部といえば、伊豆諸島と小笠原諸島ですね。前回のこのコーナー、最後の一文で「小笠原諸島にも芋焼酎!?」などと書いてしまいました。すみません。
芋焼酎があるのは、八丈島などの「伊豆諸島」です。小笠原諸島にある酒造会社は、ラムなどを製造しているようです。不確かな記憶から間違ったことを書いてしまいました。すみません。
伊豆諸島にも芋焼酎!?
さて、気を取り直して今日のテーマ「伊豆諸島にも芋焼酎!?」について書いてみたいと思います。伊豆諸島と鹿児島、似ているところがあるのです。皆様はすぐわかりますよね。それは火山です!
残念ながら、私の生まれ育った関西には活火山は一つもありません。一方、霧島火山帯の活火山が連なる鹿児島や富士火山帯の活火山が島々を作る伊豆諸島はまさに別世界です。火山は人々に雄大な景観や温泉などの恵みを与えてくれます。少年時代から大の火山好きである私にとっては憧れの土地です。
サツマイモが繋いだ縁
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しかし、火山は人々に厳しい試練も与えます。噴火による直接被害もありますが、より長期間にわたって影響を及ぼすのは、イネの生育に適さない「痩せて乾いた土地」です。鹿児島と伊豆諸島、同じように痩せた土地で暮らす人々を救ったのは「サツマイモ」でした。
そうです! 指宿の徳光神社に祀られる山川の漁師、前田利右衛門が1705年に琉球から本土にサツマイモを伝えたことが、その数十年後、伊豆諸島の人たちも救うことになったのです。何か不思議な縁を感じませんか?
焼酎造りを伝えた鹿児島の人物
さて、サツマイモが伝わったからと言って、芋焼酎ができるわけではありません。焼酎造りはどうやって伝わったのでしょうか? そこにはもう一人別の人物が関わっています。
皆様は、「丹宗庄右衛門(たんそうしょうえもん)」という人物をご存知ですか? 阿久根で生まれた薩摩の商人です。薩摩藩の御用商人として廻船問屋を営み、繁盛していたようです。しかし、清(当時の中国)との密貿易を密告され、1853年伊豆諸島の八丈島に島流しとなってしまいます。またしても鹿児島の人が関わっていたのです。
島流しにされても丹宗庄右衛門は挫けませんでした。島でサツマイモが栽培されていることを知り、故郷の鹿児島から蒸留機を取り寄せ、焼酎造りを伝えたのです。素晴らしいですね。
ただし、米が貴重だった八丈島では、鹿児島のように「米麹」は使わず、「麦麹」を使っています。だからこそ、鹿児島の芋焼酎とも違う独特の芋焼酎「島酒」ができたのですね。今も八丈島を中心に「島酒」は造られており、名産品となっています。
皆様も一度、「東京都の芋焼酎」を味わってみてはいかがでしょうか?
次号は「『お通し』を出すと、外国人は怒る︖」です。お楽しみに︕
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焼酎マイスター Dr.畑
宇治徳洲会病院 救命救急センター長 / 米盛病院 非常勤医師 畑 倫明
焼酎と温泉をこよなく愛する医師。追求心が強すぎて、好きなだけでは飽き足らず、「温泉ソムリエマスター」に続き、このたび「焼酎マイスター」「焼酎唎酒師」に続き、「日本酒唎酒師」も取得!