2024.05.21(最終更新日:2024.07.09)
第29回 泡盛はなぜ『泡盛』?
米盛病院の非常勤医師であり、焼酎マイスターの資格も持つDr.畑がお届けする鹿児島ならではの焼酎雑学。
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今回は泡盛の話です。泡盛ももちろん焼酎の仲間ですよね。しかし、我々のよく知っている芋焼酎とは造り方も味もかなり違います。因みに前回取り上げた地理的表示(GI)『薩摩』の認定は2005年ですが、泡盛にも地理的表示『琉球』が認定されていて、実は1995年の認定です。認定は琉球泡盛の方が先輩なんですね。芋焼酎と比べると歴史も泡盛の方が長いのです。泡盛は15世紀ごろ、タイや中国福建省から伝わったと言われています。一方、鹿児島の焼酎が初めて歴史上確認されたのは、第19話でもお話ししたように16世紀で、しかもその時は芋焼酎ではありませんでした。サツマイモが鹿児島本土に伝来したのは1705年と言われていますので、芋焼酎の製造は早くても18世紀前半ですから随分と泡盛の方が先輩です。
泡盛の作り方
泡盛の造り方は全麹仕込み。タイ米と黒麹菌で作った麹に水と酵母を混ぜて醸した醪(もろみ)を蒸留して造ります。我々が普段飲んでいる芋焼酎は米麹・酵母・水で一次仕込みを行った後に、蒸した芋を後から加える二次仕込み法。かなり違います。
泡盛の名前に関するいくつかの説
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それはさておき、今回のテーマ「泡盛はなぜ『泡盛』?」の話をしましょう。泡盛という名前で呼ばれるようになったのには、いくつかの説があります。
- 粟説:昔、原料に粟を使っていたから。元は「粟もり」だという説。
- 泡説①:アルコール発酵する時、ブクブク泡が出る様子を見て「泡盛」と言われるようになった。
- 泡説②:できたお酒を注ぐ時の「泡立ち」で出来の良さ(アルコール度数)を調べたから。
- 薩摩藩説:薩摩藩が焼酎と区別するために命名した。しかし、なぜ泡盛なのかは不明。
- サンスクリット語説:古代インドのサンスクリット語で酒を意味する「アワムリ」に由来する。(ほぼ眉唾)。
皆様はどれが正しいと思いますか?
泡盛の泡は盛るのか
最も有力なのが、泡説②らしいです。しかし、ここまでならネットで調べればすぐにわかる話。「焼酎マイスターDr.畑の焼酎入門」では、もう一捻りしないと気が済みません。本当にアルコール度数が高いと泡が盛るのかを実際に実験してみました。使ったのは、与那国島のお土産、泡盛の小瓶3本セット。度数はそれぞれ、60度・43度・30度です。小瓶3本を一緒に持って、上下に振り泡立ちを観察したところ、確かに度数の高いものの方が泡立つ時間が長かったのです。度数が高いと泡が盛るのは本当でした。しかし、なぜなのでしょう? 度数が高いほど比重が軽いからかなぁ…。 誰か知っていたら教えてください!
次号は「焼酎造りは錬金術だ!?」です。お楽しみに︕
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焼酎マイスター Dr.畑
宇治徳洲会病院 救命救急センター長 / 米盛病院 非常勤医師 畑 倫明
焼酎と温泉をこよなく愛する医師。追求心が強すぎて、好きなだけでは飽き足らず、「温泉ソムリエマスター」「焼酎マイスター」「焼酎唎酒師」に続き、このたび「日本酒唎酒師」も取得!