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2023.01.17(最終更新日:2023.03.10) Dr.畑の 焼酎入門

第21回 タイ米の方が焼酎に向いている!?

米盛病院の非常勤医師であり、焼酎マイスターの資格も持つDr.畑がお届けする鹿児島ならではの焼酎雑学。

 

  皆様、明けましておめでとうございます。
宇治徳洲会病院救命救急センター長(兼米盛病院非常勤医師)の畑です。
新しい年が始まりましたね。今年こそ新型コロナとおさらばして良い年にしたいものです。

 

さて、今年最初のテーマは「タイ米の方が焼酎に向いている!?」です。

芋から焼酎を造る第一歩

米焼酎の話ではありません。芋焼酎の話です。そもそも芋焼酎に米が関係するの? とお思いの皆様、勉強不足ですよ(笑)。芋焼酎を造る際も、ほとんどの場合「米麹」を作るところから始まります。稀に「芋麹」を使用している焼酎もありますが、大半は米麹を使っているのです。

麹の役割について、詳しくは当コーナーの第12回をご参照ください。
麹は、アミラーゼという酵素を作り出し、芋のデンプンを糖に変える働きをします。というわけで、芋から焼酎を造る第一歩はアミラーゼをたくさん作ること、すなわち蒸した米に麹菌を増殖させるところから始まるのです。それを、「製麹(せいきく)」といいます。

「タイ米の方が焼酎に向いている」というのは、タイ米の方が製麹に向いているということなのです。それは、いったいどういうことでしょうか?

 

タイ米と国産米の特徴

タイ米はインディカ種、国産米はジャポニカ種といいます。
それぞれを蒸すと、タイ米は粘り気がなくパラパラですが、国産米は粘り気が強く団子になりやすい性質を持っています。それが麹造りに大きな影響を与えるのです。蒸したお米に麹の元「種麹」を混ぜるとき、パラパラのタイ米は混ざりやすく、麹菌が増えやすいという特徴があります。

一方、国産米は団子になりやすいので種麹を混ぜるのが大変です。ですから、以前は多くの焼酎メーカーがタイ米を使っていました。
それが、なぜ現在はほとんどのメーカーが国産米を使うことになったのでしょう?

 

米麹が国産米に変わったのはなぜ?

皆様は、2008年の「事故米不正転売事件」を覚えておられるでしょうか?
農林水産省が農薬やカビが見つかった輸入米(事故米)を「工業用」として、「〇〇フーズ」という会社に安値で売却したところ、〇〇フーズがその事実を隠して「食用」として転売し、利益を得ていたことが判明したのです。その結果、事故米と知らずに購入して焼酎を造っていた焼酎メーカーが大きな被害を被ってしまいました。

消費者としては、タイ米を使っているというだけで、敬遠するようになるのはやむを得ないことでしょう。これが、米麹が国産米に変わった理由と聞いています。残念な話ですね。全くの風評被害です。

もちろん、今でもタイ米を使っているメーカーはあります。私は焼酎のラベルを見て、「原料:タイ米」と書かれているのを発見すると、そのメーカーの心意気を感じます。焼酎造りに対する愛を感じますよね。皆さんはどうですか?

話は変わりますが、沖縄の泡盛は歴史的にタイ米を使って造ります。これは今でも続いています。そうだ、今日は久しぶりに泡盛を飲もうかな。泡盛だって、立派な焼酎の仲間ですから…。

 

次号は「焼酎の甲乙って何?」です。お楽しみに!

 

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焼酎マイスター Dr.畑 

宇治徳洲会病院 救命救急センター長 / 米盛病院 非常勤医師 畑 倫明

焼酎と温泉をこよなく愛する医師。追求心が強すぎて、好きなだけでは飽き足らず、「温泉ソムリエマスター」に続き、このたび「焼酎マイスター」「焼酎唎酒師」も取得!

 

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