2019.07.02(最終更新日:2020.03.05)
モザンビーク派遣リポート「人と人をつなぐ」
日本人の気持ちを伝え現地の気持ちを持ち帰る

診療後のサッカーで仲良しに
今回の我々の活動報告としては、全隊合わせて10日あまり滞在し、約800人を診療しました。そして診療以外にも、日本発世界標準のサーベイランスシステム「MDS」を使って、疾患の統計をリアルタイムで提供し、その技術を現地に供与してきてきました。
また、緊急医療チーム調整所「EMTCC(Emergency Medical Team Coordination Cell)」の運営支援のほか、JICA(国際協力機構)を通じて前述の浄水器などの緊急援助物資を供与しました。
現地の皆さんに、これまで知らなかったであろう日本という国を知ってもらえた、というのも大きな成果の一つではないかと考えています。国際緊急援助隊は医療を提供しに行くのだけれども、日本人の気持ちを伝え、そして現地の方の気持ちをもらって帰ってくるのも、その使命であると思います。

大自然の美しい夕景
診療後は、現地の子どもたちとサッカーやダンスに興じました。半ば栄養失調気味の子たちばかりだったのですが、非常に上手だった。他にも音楽や踊り、そしてデザインの才能がある子もいて、びっくりしたのを覚えています。
日本チームは、なるべく現地の人たちと近しい距離感の滞在を心がけました。他の海外の医療チームが我々の見学に来てびっくりするのは、日本チームの野営地の周りに囲いが何もないこと。他国は厳重な警備体制を敷くのが通例なのです。こういった日本のやり方については、海外から一目置かれているのを感じていますし、我々が一緒に遊んだ子供たちが、初めて聞いた「日本」という国に親しみを持ってくれて、実際に留学に来てくれるかもしれません。そして、日本に何かあった時、彼らが我々を救ってくれるかもしれない。国際緊急援助というのは、単に医療を提供するだけではなく、こういった「人と人をつなぐ」ことなのだと強く感じています。そしてこのような交流こそが、国際緊急援助を行うことのの意義だと思います。

現地の子どもたちと記念撮影を行った
残念ながら日本のこういった活動は、国民の皆さんにはあまりよく知られていません。我が国の辛い災害の歴史から、J-SPEEDのような統計システムが生まれ、熊本や岡山、そして北海道で役に立った。それがさらにフィードバックされ、モザンビークの地で大活躍した。こういったトピックを、もっと日本の皆さんに広く知ってほしいと願っています。
余談ですが、現地で我々の通訳をしてくれた方が、日本チームのスタッフ全員に手作りの民族衣装をプレゼントしてくれました。すべて違う柄で作ってくれていました。アフリカというのは、客人は絶対手ぶらで帰さないらしく、それぞれの人となりに合う柄を選んでくれたらしいです。ちなみに私の柄は赤を基調としたもので、イメージにピッタリでした(笑)。
モザンビークにおけるサイクロン被害 「サイクロン・アイダイ」
発生日:2019年3月14日
上陸日:2019年3月15日(モザンビーク中部沿岸)
被災者・避難者数:約1,850,000人
死者数:598人
負傷者数:1,600人以上
全壊家屋:97,424件
一部損壊家屋:103,537件
浸水家屋:15,784件
避難所生活者数:130,000人(236避難所)
(2019年4月現在 WHO調べ)