2021.08.27(最終更新日:2023.01.13)
日常の違和感に潜む脳腫瘍とは|米盛病院 脳神経外科
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脳腫瘍センター長 祝迫 恒介 【専門分野】良性脳腫瘍手術/ 脳動脈瘤血管障害の開頭手術/ 三叉神経痛・顔面痙攣などの機能的外科手術
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顔の痛みやぴくつき、視力や聴覚の低下などの症状は、脳腫瘍の代表的な症状です。
このような症状が現れた時は、お早目にご相談ください。
目次
脳腫瘍のできる場所
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脳腫瘍のできる場所
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脳は硬膜という厚く硬い膜と、くも膜と呼ばれる卵の殻の裏にあるような薄い透明な膜に包まれています。
脳腫瘍は2種類のでき方があり、「脳の中」と「脳の外側から硬膜の間」にできます。
脳腫瘍とは
頭蓋骨内にできる全ての腫瘍のことをいいます。
脳腫瘍は、脳の中にできる場合と脳の外側と硬膜の間(以下、脳の外側)にできる場合の2通りに大きく分かれます(上図参照)。脳の中と外で症状や、治療方法が異なります。
主な症状は?
脳の中にできる脳腫瘍で多い症状は、頭痛や吐き気、言葉が出にくい、手足が動かしにくい、けいれんなどです。腫瘍の悪性度によっては命に関わる場合もあります。
脳の外側にできる脳腫瘍では、目が見えにくい、耳が聞こえにくくなるなどの症状が現れることがあります。痛みを伴うものもあり、顔の三叉神経近くにできた腫瘍が三叉神経痛となり、顔を少し触ったり、風があたったり、食事をしたりすることにより、痛みが誘発されます。痛みを感じる場所によっては、虫歯の痛みと勘違いされることもあります。
また、前頭葉にできた場合は目立った症状がなく、認知症を発症し、気付く程に進行した時には、大きな腫瘍となっている場合もあります。
脳の中にできた場合 ~特徴と治療~
脳の中にできる脳腫瘍で最も多いものは神経膠腫(しんけいこうしゅ)とよばれるもので、良性のものから悪性のものまであります。
悪性、良性の違いは腫瘍の増殖速度と周りへの拡がりやすさで決まります。ⅠからⅣのグレードがありI・Ⅱが良性、Ⅲ・Ⅳが悪性です。グレードが上がるにつれて命を落とす可能性も高くなります。
すべてのグレードにおいて、開頭手術で腫瘍を摘出しますが、腫瘍は脳の中にできたものであり、正常な脳組織との境が不明瞭なため、言語機能の悪化や、麻痺などを合併しないように「ナビゲーション」、「モニタリング」、「覚醒下手術」などにて最大限の摘出をはかります。
―治療の方法について―
- ナビゲーション…カーナビのようにMRI 画像上で脳のどこを触っているかをリアルタイムで知ることが可能です。
- モニタリング…手足の運動、感覚を司る部位からの脳波を記録しながら、その機能が落ちないことを確認して腫瘍を摘出していく方法です。
- 覚醒下手術…手術中に痛みが起きないようコントロールをして麻酔から覚めてもらい、患者さんとの会話により言語機能などを確認しながら摘出していく方法です。
外科摘出後は放射線治療、抗がん剤の内服、点滴治療などが必要となる場合があります。
脳の外側にできた場合 ~特徴と治療~
脳の外側にできる腫瘍には髄膜腫(ずいまくしゅ)、神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)などがあり、ともにほとんどが良性腫瘍です。腫瘍ができた部位により症状は異なります。
視神経の近くにできれば視力障害で発症し、聴神経の近くにできれば聴力障害で発症します。脳の中にできる腫瘍と違い、正常な脳組織との境が明確なため全摘出が可能です。
しかし、視神経、顔面神経、聴神経などの脳神経が腫瘍表面に薄く引き伸ばされて存在する時には、神経機能をモニタリングしながら摘出することもあります。
また、脳の外側でも頭蓋底と呼ばれる頭蓋骨の奥に腫瘍が存在する場合、複雑な頭蓋底部の骨を削る必要があります。
術後の残存腫瘍に対して、経過観察後、ガンマナイフ、サイバーナイフなどの放射線治療を追加する場合もあります。
発生の原因
主に遺伝的な要因が影響します。血縁関係の方で、前頁で挙げた症状を経験されたことがある方や、脳腫瘍の治療をされた事がある方がいる場合は、症状を感じた際、かかりつけの医療機関へのご相談をおすすめいたします。
発見の方法
MRI検査で発見します。前頁で挙げたような症状があるようでしたら、早期の検査をおすすめいたします。症状が分かりにくいものもありますので、定期的な検査でご自身の健康を把握することが大切です。
米盛病院 脳神経外科のご案内
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2021年より医師が増員し、診療の幅が広がりました。
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