2020.09.09(最終更新日:2021.02.08)
心肺蘇生法の手順|新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた対応
目次
④ 呼吸の確認と心停止の判断
⑤ ただちに胸骨圧迫を開始
⑥ AED使用のポイント
⑦ 心肺蘇生の実施の後
救急の日とは
9月9日は、「救急の日」。
9(きゅう)9(きゅう)の語呂合わせで、1982年に厚生労働省によって制定されました。 救急医療や救急業務への国民の正しい理解と認識を深め、救急医療関係者の意識高揚を図ることを目的としています。
救命処置が必要な場面に遭遇したら、あなたはどの様に行動しますか?
実際にどのように判断・行動したら良いか分からない…という方も多いはず。
もしもの場面に役立つのは、「日頃の意識や備え」です。 この機会にぜひ改めて考えてみましょう!
(監修:岩永 康之/米盛病院 麻酔科部長・学習システム室室長・日本救急医学会ICLSコースディレクター)
必要な「救命の連鎖」
心停止や窒息という生命の危機的状況に陥っている、もしくはその可能性がある傷病者を救命し、社会復帰へ導くためには、「救命の連鎖」が必要です。
日本蘇生協議会(JRC)は、以下の4点を提唱しています。
当記事では、私たちが遭遇する可能性のある「1.心停止の予防」~「3.一次救命処置(心肺蘇生とAED)」を取り上げます。
1.心停止の予防
2.心停止の早期認識と通報
3.一次救命処置(心肺蘇生とAED)
4.二次救命処置と心拍再開後の集中治療
【基本的な考え方】
● 胸骨圧迫のみの場合を含め、心肺蘇生はエアロゾル(ウイルスなどを含む微粒子が浮遊した空気)を発生させる可能性があるため、新型コロナウイルス感染症が流行している状況においては、すべての心停止傷病者に感染の疑いがあるものとして対応
● 成人の心停止については、人工呼吸を行わず、胸骨圧迫とAEDによる電気ショックを実施
● 子どもの心停止については、講習を受け人工呼吸の技術を身につけ、人工呼吸を行う意思がある場合、人工呼吸も実施
※子どもの心停止は、窒息や溺水など呼吸障害を原因とすることが多いため、人工呼吸の必要性が比較的高い
※ 本指針は、新型コロナウイルス感染症に関する新たに知見や感染の広がりの状況などによって変更する場合があります。
1.心停止の予防
心停止や呼吸停止となる可能性がある傷病を未然に防ぐことが大切です。
例:脳卒中発症時の初期症状への気づき、高齢者の窒息、入浴中の事故、熱中症など
2.心停止の早期認識と通報
早期認識は、突然倒れた人や反応のない人を見たら、ただちに心停止を疑うことから始まります。
① 安全の確保
● 救助者自身の安全・周囲(現場)の安全を確認することが重要です。
② 反応の確認
● 傷病者の肩を軽くたたきながら、大声で呼びかけを行う。
何らかの反応や仕草が見られない場合、「反応なし」と捉える。
● 呼びかけに対して反応がない場合、その場で大声で叫び、周囲の注意を喚起する。
③ 救急・緊急通報
● 周囲の人に救急通報(119番通報)と近くにAEDがある場合手配を依頼する。周囲に人がいない場合は、発見者自身で救急・緊急通報を行う。
※反応の有無に関して迷った場合も、救急通報(119番通報)し、通信司令員の指示に従う。
3.一次救命処置(心肺蘇生とAED)
④ 呼吸の確認と心停止の判断
● 傷病者に反応がなく、呼吸がないもしくは異常な呼吸の場合、もしくはその判断に自信が持てない際は心停止と判断し、ただちに胸骨圧迫を開始する。
※呼吸の確認には10秒以上かけないようにする。
⑤ ただちに胸骨圧迫を開始
● 傷病者をあおむけに寝かせ、救助者は傷病者の横にひざまずく。
● 肘をまっすぐに伸ばし、圧迫部位へ真上から垂直に圧迫する。
(救急蘇生法の具体的手順)以下を意識しましょう!
【部位】胸の真ん中を
【深さ・強さ】約5cm程度沈むように (※6cmを超えないようにする、小児・乳児は胸の厚さの約1/3)
【速さ】1分間あたり100~120回のテンポで
【圧迫の解除】胸壁が元の高さまで戻るように行う。
【質】中断は最小限(10秒未満)にし、救助者が複数いる場合は役割を交代しながら、絶え間なく行う。
マスクや衣服などでも代用が可能。
⑥ AED使用のポイント
(救急蘇生法の具体的手順)AED到着後のポイントは2つ!
● 電源を入れる
● 音声指示(メッセージ)に従う
AEDの音声指示に従い、
(1)電極パットを胸に貼る
● 右前胸部(右鎖骨の下)と左側胸部(左わきの下)に電極パットを貼ります。
(2)電気ショックを行う
● 音声指示に従って、ショックボタンを押し、電気ショックを行う。
(3)胸骨圧迫を再開する
⑦心肺蘇生の実施の後
救急隊に引き継ぐまで、もしくは傷病者に普段どおりの呼吸や呼びかけへの反応や目的のある仕草が認められるまで続ける。
傷病者の鼻と口にかぶせたハンカチやタオルなどは、直接触れないようにして廃棄するのが望ましい。
※ 上記手順に記載のない点は、従来どおりの一次救命処置を実施する。
一秒を救う。一生につなぐ。
米盛病院では、BLS研修を積極的に実施し、心肺蘇生法やAEDの使用について実践的に学ぶ場を設けています。
また、他院や専門学校などでの出張BLSにも取り組んでいます。
※BLS研修(Basic Life Supportの略)とは、心肺停止あるいは呼吸停止に対する一次救命処置のことです。
これからも、「一秒を救う。一生につなぐ。」をコンセプトに、地域になくてはならない医療機関を目指して参ります。