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2022.11.04(最終更新日:2023.01.13) 医療のお話

骨粗しょう症治療と米盛病院の取り組み

整形外科 骨粗鬆症センター長
長谷 亨

これから寒くなる季節、こたつや電気ストーブのコードなど、ちょっとした段差につまずき、転倒してしまうことがあります。特に高齢の方は、転倒の際に骨折してしまうケースが多く、骨折の場所によっては寝たきりの原因にもなり得ます。

今号では、「骨粗しょう症」について、ご紹介します。

 

目次

 

骨折リスクが増大する骨粗しょう症

骨粗しょう症とは、

骨密度が低下し、骨折リスクが増大した状態と定義されています。

日本では1,280万人の骨粗しょう症患者(女性約980万人、男性約300万人)がいると推定されています。

 

骨粗しょう症に伴う骨折を起こすと、日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)が低下することになります。高齢の方は寝たきりになる可能性もあるため、骨折を起こす前からの予防、治療が重要と言われています。

骨粗しょう症は、加齢や閉経などによっておこる「原発性骨粗しょう症」と、病気や薬剤の影響などによって引き起こされる「続発性骨粗しょう症」に分類されます。

 

原発性骨粗しょう症

原発性骨粗しょう症については図1のような診断基準があり、基準を満たす方は、薬物治療開始になります。(基準を満たさない方も治療開始となることがあります)

原発性骨粗しょう症の診断基準

※1)立った姿勢からの転倒か、それ以下の外力によって発生した骨折
※2)YAM =若年成人平均値

 

続発性骨粗しょう症

続発性骨粗しょう症の場合は、原疾患の治療と同時に、骨粗しょう症の治療が行われることもあります。また、糖尿病や慢性腎臓病など、いわゆる生活習慣病が骨代謝に悪影響を及ぼすことも最近分かってきました。

 

検査について

腰椎や大腿骨などの骨密度を測定するDXA骨密度測定装置

骨粗しょう症検査の代表的なものに「骨密度測定」があります。
検診では簡便なQUSと呼ばれる超音波を用いることが多いですが、当院では、より精密で治療効果の評価もできるDXA(デキサ)法(腰椎・大腿骨を測定)を行っています。

そのほかに各部位のX線検査、骨折リスク評価ツール(FRAX®)、血液検査(骨代謝マーカー、腎機能、カルシウム・リンなど)を行っています。

 

治療について

治療では、前述した骨密度検査や血液検査の結果にもとづき、それぞれの患者さんに合った薬剤を選択します。
また、骨の健康に必要な栄養素であるビタミンDは、多くの高齢者で不足状態にあると推定されているため、薬剤に併せて処方することが多いです。薬剤には毎日内服するもの以外にも、週1回や月1回内服するもの、錠剤ではなくゼリー状のもの、注射製剤など、選択肢がいろいろと広がりました。

 

脆弱性骨折とその治療

脆弱性骨折とは

軽微な外力(立った姿勢からの転倒か、それ以下の外力)によって発生した骨折です。代表的なものには、大腿骨頸部骨折、胸腰椎椎体骨折、橈骨遠位端骨折、上腕骨近位端骨折などがあります。

 

大腿骨頸部骨折

大腿骨頸部骨折の患者さまに対する人工骨頭置換術

大腿骨頸部骨折では「転倒し股関節に強い痛みがあり動けなくなった」と救急外来を受診される方が多く、適切な治療が行われないと、著しく日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)が低下することになります。ほとんどの患者さんにおいて、骨折型により、骨接合術あるいは人工骨頭置換術が行われます。

2007年の調査では大腿骨近位部骨折の年間発生数は15万人といわれており、当院で治療する同骨折の患者さんも大半が骨粗しょう症に罹患しています。

 

胸腰椎椎体骨折

胸腰椎椎体骨折は、最近では「いつのまにか骨折」といわれるように、3分の2の方が無症候性のため骨折に気づかず、2回目の骨折を起こして受診したときに、医師から初回の骨折を指摘されることも少なくありません。

通常はコルセットを装着し、骨癒合(骨がつながること)を獲得できますが、椎体不安定性の強い場合には、手術が適応になります。既存の骨折があった場合、新たに骨折を起こす相対リスクは約4倍とされ、骨粗しょう症の治療が適切に行われないと、次々と骨折を起こしてしまいます。これは、骨折の連鎖、またはドミノ骨折といわれています。

骨粗しょう症が進行すると、骨がスカスカになり、もろく折れやすくなります。重症になると、くしゃみなどの衝撃でも背骨などを骨折することがあります。

 

米盛病院の取り組み「米盛骨粗鬆症リエゾンサービス委員会」

医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・医療ソーシャルワーカー・理学療法士・医師事務作業補助者などで構成される、米盛病院骨粗鬆症リエゾンサービス委員会のメンバー。17名で構成され、うち、骨粗鬆症リエゾンマネージャーは4名。

当院では、「米盛骨粗鬆症リエゾンサービス委員会」を立ち上げ、活動を行っています。骨粗しょう症対策のための連携を中心とした、多職種(医師や看護師、薬剤師、管理栄養士など)による委員会です。

その活動内容は、骨粗しょう症に関すること全般で、特に前述の骨折の連鎖を防ぐために、大腿骨頸部骨折で入院された患者さんをメインに骨粗しょう症の評価を行い、必要に応じて入院中から骨粗しょう症の治療を開始するなどしています。

現在病棟にはご家族が入れないため、患者さんご本人としっかりコミュニケーションを図りながら、自己注射の練習や転倒予防のための運動、栄養指導なども行っています。そして退院後は骨粗しょう症外来で継続的にフォローします。週2回の骨粗しょう症外来では、1日に約40名もの患者さんが来られる日もあります。

また、コロナ禍で骨粗しょう症予防啓発の機会が減少している分、外来や回診で活用できるような資料の作成にも取り組んでいるほか、メンバー全員が月2回集まり、患者さんのデータをもとに薬剤や治療について話し合い、専門的な立場で介入できるよう、情報共有をしながら活動しています。

米盛病院・与次郎米盛クリニックでは、今後も引き続き骨粗しょう症と真摯に向き合い、患者さまの日常生活がより楽しいものになるように、治療・啓発に努めてまいります。

 

整形外科 外来案内

与次郎米盛クリニックで診察を行っています。
【受付時間】月~土曜8:3017:00
【診療時間】月~土曜9:0012:3014:0018:00
※土曜の診療は17:00まで
12:00以降の受付は午後の診療となります。
【問い合わせ】 099-230-0100(代)※平日 9:00 17:00
【Homepage】整形外科|米盛病院

 

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