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2023.01.18(最終更新日:2023.03.10) 医療のお話

知らないと怖い血管のこぶ 大動脈瘤 ―原因と治療、予防についてー

心臓血管外科 部長 心臓血管外科 主任部長
山本 裕之
【専門分野】心臓血管外科、大動脈瘤・大動脈解離手術、大動脈疾患低侵襲治療、血管内治療外科、大動脈ステントグラフト治療

医療機関で検査や人間ドックを受けた際、まれに予期せぬ病気「大動脈瘤」が発見されることがあります。

もし発見された場合は、速やかに専門医がいる医療機関を受診しましょう。

 

目次

 

動脈瘤とは

血管の壁が弱くなり、自身の血圧によって動脈が風船のように膨らんでしまう病気です。
特に、心臓から出される血液を運ぶ体内でもっとも太い血管に発症するものを大動脈瘤といい、胸部に動脈瘤がある場合を胸部大動脈瘤、腹部に動脈瘤がある場合を腹部大動脈瘤といいます。

 

大動脈瘤破裂

この膨らみが破裂してしまうと、お腹の中や心臓・肺のあたりに血液が流れ出て、突然死につながる可能性がある恐ろしい病気です。

しかし、この病気は無症状の場合が多く発見が難しいため、日本では、他の病気でのCT・腹部エコー、人間ドックの際に偶然発見されることがほとんどです。その際は速やかに専門医がいる医療機関を受診する必要があります。

 

大動脈解離

大動脈解離の模式図

①正常な大動脈 
②内膜の傷口から中膜に血液が流入し、中膜が徐々に裂け始める 
③血液が本来通っていた道(真腔)とは別に新たな通り道(偽腔)ができ、2つの血液の流れる道ができている

 

大動脈解離も大動脈瘤と同じ様に、大動脈が大きくなる(膨らむ)病気です。
大動脈の管は内膜・中膜・外膜の三つの層に分かれていますが、内膜にできた傷から中膜に血液が浸入しその圧力で中膜が裂けてしまう状態のことをいいます。
また、大動脈解離の裂けた場所から血液が流れ込んで溜まり、外膜が膨らんでこぶ状になった場合は、解離性大動脈瘤と呼ばれます。大動脈解離の症状は、何の前触れもなく胸や背中などに激痛が起こり、緊急手術が必要な場合があります。

 

冬場特に気を付けたいのが、大動脈瘤破裂や大動脈解離、心筋梗塞など。
トイレや浴室など寒い場所は、あらかじめ暖めておくなどして屋内での温度差をなくすようにしましょう。

 

原因と症状

動脈瘤ができる原因は、動脈硬化や高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、ストレスなどさまざまな要因が関連すると考えられています。

大動脈瘤は、自覚症状がないまま進行する場合がほとんどですが、瘤(こぶ)が大きくなると周囲が圧迫されてさまざまな症状があらわれることがあります。
胸部の場合は、しゃがれ声になったり飲み込みづらくなることがあります。腹部の場合は、やせている方では、お腹にこぶが目立つようになります。

破裂が差し迫っている場合は強い胸痛や腹痛、腰痛、背部痛があらわれることもあります。

 

治療について

大動脈瘤の治療は、破裂する危険性が低い大きさであれば、生活習慣に気をつけて、定期的に専門医を受診することが大切です。

次第に瘤が大きくなり、破裂の危険性が高くなると、大動脈瘤を人工血管に置き換える人工血管置換術や、動脈瘤の中にステントという骨格(バネ)がついた人工血管を挿入するステントグラフト内挿術を実施します。(写真①②参照)

比較的若い世代であれば、胸やお腹を切る人工血管置換術が第一選択になります。
一方で高齢の方や体力に自信がない方、いろいろな病気を持っている方にとってこの手術は、術後合併症が心配されるほか、手術による身体的負担により、退院できても生活の質(QOL)が低下してしまうことがあります。
そのため、なるべく身体に負担をかけずに治療することを目的に生まれたのが、ステントグラフト内挿術です。

鞘状のシースに収納されたス テントグラフトは患部に到達 すると写真のように拡張する

ステントグラフトとは、人工血管(グラフト)に金属製のバネ(ステント)を縫い合わせたものです。

ステントグラフト内挿術を行う山本医師

治療方法は、折りたたまれたステントグラフトを収納したシース(6~7mm径の医療用の管)を鼠径部(両脚のつけ根)の大きな血管に穿刺、挿入して、患部に到達したらステントを拡張して大動脈内でその形状を維持させます。
そうすることで血液が動脈瘤の壁に圧力をかけないようにして動脈瘤が破れないようにします。やがて動脈瘤は風船がしぼむように小さくなります。
このステントグラフトを用いた治療での入院は術後3日から1週間ほど。痛みは脚の付け根がつっぱる程度で、手術の翌日から食事も再開し、歩行することもできます。
最近ではメスを使わない治療により、入院期間をさらに短縮することも可能です。

 

予防と検診

動脈瘤を引き起こす主な原因である高血圧を予防することが大事です。また、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病を患っている方は、しっかり治療しましょう。

日常生活においては、暴飲暴食はしない、塩分摂取を控える、禁煙をする、便秘に注意する、入浴時やトイレ時の急な温度変化を避ける、飲酒は適量を心がける、十分な睡眠や休養を取るなどの生活に関する習慣づけが大切です。

動脈瘤は偶然発見されることが多く、検査をしなければ発見されることはまずありません。小さなこぶが発見されたら定期フォローを行うことが重要です。早期発見のためにも健康診断はしっかり受けましょう。

大動脈瘤の発見から治療まで

 

血管外科・心臓血管外科チーム

心臓の病気のことで気になることがございましたら、与次郎米盛クリニックの「心臓・血管外来」を受診ください。(月~木曜日)

【お問い合わせ】
099-230-0100(代)※平日 9:0017:00

 

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